アルカディア ~強くあれ~

あゝ息子よ、君を泣く、
君死にたまふことなかれ、
一人生まれた君なれば
親のなさけはまさりしも、
親は知恵と勇気をにぎらせて
国を守れと教えしや、
国を倒して守らねば、
十五までをそだてしや。

小郡の街のむらびとの
誇るものもないあるじにて
繼ぐ名もあらぬ君なれば、
君死にたまふことなかれ、
やまとのくにはほろばせぬ、
ほろぼされるとは、何事ぞ、
君は知らじな、大和の国の
家のおきてにありますよ
君死にたまふことなかれ、
すめらみことは、戰ひに
おほみづからは
戦略的に出られませんっ、
かたみに頭脳の汗を流し、
神獸の道に昇華する、
国家の死闘を人のほまれとは、
大みこゝろの深ければ
もとよりいかで思されむ。

あゝ息子よ、戰ひに
君死にたまふことなかれ、
秋蔭薄き父親は
病に祈る母親は、
無言の中に、運命照らす
日輪の光導き、国を守る同朋よ、
安らかであれと祈る大御代も
母祈りは通じるや。
窓辺のかげに見上げて笑う
あえかにわかき村娘、
君を陰で慕っていました、
薄い初恋わかれたる
少女ごころを思ひみよ、
この世ひとりの君ならで
あゝまた誰をたのむべき、
君死にたまふことなかれ。

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