母親 ~負債~

狂犬と私は幼馴染である。
出会いは幼稚園で、狂犬は既に
小型狂犬として、犬語を操っていた。
そんな小型狂犬とつるんでいたのが私である。

一緒に生まれた双子の兄弟。
当時そんなことを言っていた私は、
小型狂犬の母親の興味を引いたのかもしれない。

上品で聡明な小型狂犬の母親は、
何故、私が小型狂犬とつるんでいるのか、
家に招いて研究したかどうかは分からないが、
私をとても可愛がり、
私も彼女をママと呼んでいた。

小型狂犬は早熟で可愛い子を見つけては、
カックンカックンハッハッハッハッ状態だったが、
私がやきもちをやかないでつるんでいるのを、
母親が不思議がったものである。

当時私は犬を飼っていて、その時代、
去勢も避妊もないので、犬が他所のメス犬に、
のっかれば、すいませ~んといって、
尻にケリ入れてキャインと鳴かせるマナーを
小型狂犬にも実践していただけである。

小型狂犬と私は小さな冒険をして、
可愛い子のカックンカックンハッハッハッハに
リードを引っ張り、無事母親の元まで、
送り届けるミッションを実行していた。
小型狂犬は高度な犬語を話していたので、
記憶にある台詞などないが、
私も獣使いとして、警察犬を操る位の
実力があったのかもしれない。
なんでつるんでいたのか、確かに不思議である。

小型狂犬の父親は出来のいい息子と、
つるんでいる毛並みの悪い私を、
コイツはフラウボウだと、いつも念押ししていた。

母親はピアノを弾くより、あなたは、
本を読んだ方がいいと、絵本を読ませてくれた。

8歳の時、小型狂犬が私の家で、
一緒にお泊り会をしたことがある。

そんなほんわかした時代が私の幼少期にもあった。

ところが、ふぃに私に暗黒時代が訪れる。
実の母親が育児放棄して、近所の変態一家に監禁され。
そんな私を、小型狂犬の母親は、
私を養女にすると騒動を起こした。

そして、最後に彼女は私に魔法をかけた。

その魔法は現在でもうっすらと効力を発揮している。
私の魂の一部となって、生きる支えになっている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です