ガラスの窓 ~クロ猫とミケ猫~
ガラスの窓。
クロ猫がこの家に来た時から
ずっとずっとガラスの窓はあった。
それが当たり前だった。
クロ猫がこの家に来た時から
ずっとずっとガラスの窓はあった。
それが当たり前だった。
ミケ猫が窓の向こうの庭に
可愛らしい子猫を連れてくるまでは。
シャム太郎、シャム太郎、
ガラスの窓の向こうで、ミケ猫が叫ぶ。
クロ猫は窓の向こうのミケ猫にこう垂れる。
お願い、シャム太郎を、
私にちょうだい。
大事にするわ、可愛がるわ、
呼びつけにはすべて答えるわ、
ずっとそばに寄り添うと誓うわ、
ミケ太郎、あなたは、
若い、綺麗、誰もがあなたを好きになるわ、
あなたはなにもかも持ってるわ、
わたしは、わたしは…。
ミケ猫はクロ猫を見上げて…。
クロワッサン、
あなたは愛に包まれていてよ、
その愛でシャム太郎を包んであげて。
もう、こんなに肌寒くなっちゃったのよ。
あの子をよろしく。
ガラスの窓を隔てて、
ミケ猫とクロ猫は小さく笑った。